◆2017年3月16日発売 vita dramatic create
『ファタモルガーナの館-COLLECTED EDITION-(CERO D)
●悲劇と絶望の西洋浪漫サスペンスホラーノベル Amazon特典付通常版 vitaTV対応

Amazon特典
・vita専用壁紙

プレイ前コメント
2012年発売の本編だけのPC版を、何度か購入しようかどうしようかを迷って
結局スルーしていた作品でした。その後、2015年に発売された外伝、vita版の
追加要素として現代編のシナリオが入っています。
全部が一本化したのが2017年に発売となった、このCOLLECTED EDITIONです。
シナリオが面白いと評判もよく耳に(目に)していたので、やっと購入プレイを決め
ました。本編と外伝はキャラクター音声なしですが、現代版だけは一部ボイス付きで、
これもまた楽しみです♪

 
プレイ済★   
自己評価・・・75点   一般おススメ度・・・★★★★
久しぶりに徹夜・・・どころか、他の事を全て煩わしく感じるくらい没頭してしまった
非常に危険な作品でした(笑)「(^^; )いえ、あくまで好きな人にとってはであって、
本当に淡々と文章を読み進める作品なので、ある意味ゲーム性がありません。
完全に豪華なサウンドノベルです。「だったら本でいいじゃないか」と言われても、
それはそれで頷けるものではなくて(笑)、絵と音楽と意味が無いようであるのだと
思う選択肢あってこそ。でもそれを除いても、確かに文章だけ見ても秀逸だなぁと
個人的には思いました。これを読んだら暫くはどんな作品も霞むだろうなぁ(笑)。
そしてどんな感想を述べても、自分の言葉の陳腐さで自己嫌悪になりそう(^^ゞ
読み終わった今でも、他に見聞きする音楽やニュースの中にすら何かしら本作を
ふっと思い出させる要素があったりして、なんて怖い作品をプレイしてしまったのか
と今更ながら思います。今の私は割りと冷静にこれを書いているのですが、たぶん
後からキますよ、これ。今のところ意識しないようにしてますけども・・・ヤバいものに
手を出してしまいました(笑)。米津玄師さんの「Lemon」という曲、普通に良い曲だなぁ
と思って聴いていたのに、プレイ後にヤコポとモルガーナのことみたいだなと思ったら
途端に本気で涙が止まらなくなってしまいました〜(ToT) 厄介なものに手を・・・(-_-;)
点数はともかく、一般おススメ度の★を4.5にしたのは仲間を増やしたい気持ちと
このジレンマに嵌る人を増やして良いのか(笑)って気持ちの表れですw

概要
本編
あなたは気付けば古ぼけた屋敷にいた。目の前には、あなたを旦那様と慕う
翡翠の目をした女中がいる。しかし、あなたには記憶がなく、自分が何者なのか
分からない。生きているのかさえも。
そんな、あなたに女中は屋敷で起きた数々の悲劇を見せるという。
そこに、あなたの痕跡があるかもしれない・・・
あなたは、時代と場所を越えた四つの悲劇を目撃する。
これらを物語として終えてしまうのか、あるいはその先を求めるのかは・・・
「あなた」次第だ。
しかし、どこかの誰かはこう言うだろう。

  「他人の悲劇だから耐えてこられたんだよ」

外伝編
本編は「あなた」に対する館の女中や、「あなた」の目線、言葉で物語が進行して
決着を迎えますが、こちらはその同じ場面を語られていた側の人物の目線、言葉、
思考で進行します。

現代編
私たちには過去の記憶がある。少年少女時代といった十年二十年で済むものでは
なく・・・前世、という過去。
かつて呪われた館が存在し、中世という時代に生きた記憶。
それだけでなく、魂という存在で、数々の時代を見守ってきた記憶。
そして・・・
呪いという因果で結ばれた者たちと、関わりをもった記憶。
パリ郊外のアパートで両親の代わりに大家をすることになったミシェルは、
そこでかつて関わった人々と巡り会うことになる。
だが、その時はまだ知らなかった。彼らがどのような経緯を経てきたのかを。
前世の記憶があるということは、必ずしも幸福への道ではないのだということを。

システム
本作は2012年発売の.本編と、その3年後に発売されたAnother Episodeを
一つのパッケージに統合したコンプリート版になります。
なので、『本編』『外伝』『現代編』と3つのシナリオが楽しめる仕様です。

参考:ファタ・モルガーナはイタリア語読みで、現代英語だとモーガン・ル・フェイ。
   「妖精モルガン」という意味や「大いなる女王」の意味を持つケルト神話の女神、
   モルガンと同一視されることもある。九姉妹の長女。また、アーサー王伝説では
   魔女としても登場している。

 ※以下、ネタバレ詳細感想につき未プレイ&ネタバレがダメな方は、
   
ここで回避をお願いしますm(_ _)m

●本編:登場人物と物語について

館の中で目覚める「あなた」を館の女中が見つめているシーンから始まります。
そして「あなた」が誰であるか思い出させるため、女中は館の記憶を見せます。
まずは、かつて美しい薔薇の花が咲き誇り、亜麻色の髪の一家が幸せに暮らして
いた時代の「第一の扉」・・・1587年〜1603年

館の女中

主人公である「あなた」が目覚めて最初に会話をする相手。
あなたのことを「ご主人様」と呼び、記憶がないあなたに様々な館の記憶を
見せて思い出すよう促す。正体も年齢も全く不明だが、言葉の端々から
人ではないことが伺える。(幾時代を経ても歳を全くとらない、鏡に映らない
など)言動は丁寧口調だが古めかしい。

ネリー・ローズ

第一の扉で登場する館に住む「亜麻色の髪の少女」で
メルの妹。兄であるメルをとても慕っており、メルを王子様、自分をメルの唯一の
お姫様だと自負している。少し我ままな面もあるが、愛くるしい女の子。
14歳になる頃には、さすがに我ままが愛くるしい程度では済まない鬱陶しさを放つように
なってしまい、特に兄が別の女性に恋心を抱くに至って自分を蔑ろにされることに怒りを
覚えるようになる。時を同じくして大嫌いな男性との婚約を無理に決められ、兄に助けを
求めるが拒絶され、全て白い髪の少女のせいだと彼女を恨むようになる。
実は彼女が、昔館でお抱え画家をしていた男と母親が密通して出来た子供であり、自分や
兄と腹違いの娘だった事を知っておかしくなる。

メル・ローズ

第一の扉で登場する館に住む「亜麻色の髪の少年」でネリーの
兄。幼い頃はネリーを一番大切にしていたが、自分の将来を悩む年齢に達してから
出会った白い髪の少女に恋心を抱くようになった。基本的に優しい性格であるが、
幼さからくる自分勝手さもあり、白い髪の少女と自分の関係に嫉妬して邪魔ばかりする
ネリーを疎むようになる。実は白い髪の少女が自分たちと腹違いの娘で兄妹である事を
知らず、それを先に知ったネリーが白い髪の少女を装い自分と関係を持とうとした事実に
恐れ戦いて逃げ出す。その先で変わり果てた姿の白い髪の少女と再会するが、心の
余裕が全く無かった彼は彼女だと知らずに突き放してしまう。彼女だと後から知って後を
追うが、彼女はまるで最初から居なかったように闇に溶けて消えてしまった。

白い髪の娘

第一の扉で登場する謎の少女。真っ白い髪と血のように赤い瞳を
しており、世間では「魔女」と呼ばれたこともあった。父親が館でお抱え画家をしていた時、
館の婦人(メル、ネリーの母親)と不義を働き子供が出来た。生まれた子供が白い髪の
娘だったため、館の主(二人の父親)の怒りを買って放り出された。悪い噂が立って、彼は
どこも雇う事のない放浪画家となり、苦労して娘を育て病気で死んでしまう。娘は、詳しい
事情を知らなかったため、父を放り出した館の主を恨み復讐を誓ってやって来たが、
娘を見た婦人は彼女を女中として雇い、側においた。館の主も何故かそれを許した。
やがて、メルの優しさに触れて彼女も恋心を抱くようになってしまい、復讐は中止に。
メルから告白されて結婚まで誓うが、ネリーの嫉妬から髪を切られ館を追い出される。
変わり果てた姿で町を彷徨っていたが・・・(物語の時間軸があやふやで、メルが金を
恵んだ浮浪者が彼女だったのか?とか色々と不明な点も多い。このルートではメルに
冷たくあしらわれて逃げた後、追ってきたメルの目の前で闇に消えてしまった)。

はぁ〜。なんだろうな(-_-;)うん、なんかよくある話って気もするのに、酷く悲しい話です。
切ない系より単純に悲しいね。たぶんメルが正しい?と思うし、ネリーがもう少し大人の
考え方をしていたら・・・とも思うけど、それでもネリーはメルが想像擦るよりも、もっと
彼女が言うとおり狭い世界でしか生きてこれなかった。だから、唯一助けてもらえる、
無条件で味方でいてくれる(いられる)存在だと思っていたのに、横取りされた!っていう
憤りは、少なからず理解は出来ます。まぁ、だからってあそこまでしちゃうとね・・・。
メルの方も、もっとネリーに気を配ってあげる度量があればな、と思わなくもないけど
そうでなくても恋は盲目なんだし、初恋なんだし・・・こっちもまた仕方ないよねー(ー'`ー;)
白い髪の少女に至っては悪くない・・・はず。いや、生まれた事が悪いのか!?いやいや、
それを言うなら彼女の父親と密通してた母親が悪いんじゃない!?そもそも、その娘を
迎え入れた主もおかしいんじゃない!?とにかく、初恋の相手が腹違いの兄妹、ずっと
慕っておかしくなった相手も兄と妹・・・個人的にちょっとだけ地雷(笑)。近親相姦ものは
苦手じゃないけど、理屈抜きですんなり受け入れる方が不自然な事ではあると思う。
少なくとも、遺伝子レベルの問題でダメだろう。生き物がそれで出来てる限り理屈抜きで。
でも、館の悲劇っていうのは・・・そんな程度の問題ですらない様子です。もっともっと
古いふる〜い時代からある、何かが館に住む人間を不幸にしているらしいのです。

嘆き崩れるメルの残像とともに、扉が閉じられると庭は見る影も無い荒れよう。
そして女中は次の扉へと「あなた」を案内します。そこは、亜麻色の髪の一家が絶えて
50年ほども無人となった荒れ果てた館への「第二の扉」・・・1707年
大きな戦争が起り、国全体が荒廃していました。館は呪われた噂とともに住む者もおらず、
しかし館の女中だけは変わらぬ姿でそこにおり、仕える者の居ない寂しさを噛み締めて
いました。ある日、地下室で異変が起り、女中は獣をみつけます。姿は辛うじて人のように
見えるけれど、言葉も全く通じず、血と腐敗臭にまみれたおぞましい存在。
女中は何とか彼を人間らしく仕立てようと努力し、それは実りかけるのですが・・・
やがて、館に一人の迷い人が現れます。

ポーリーン

第二の扉で登場する女性。貿易商の父親(浅間という日本人)と(たぶん
イタリアかスペイン?あたりの)異国の母親とのハーフ。結婚を約束した父親と同じ仕事の
貿易商をしている男性がいる。彼の帰りをずっと待っており、ある日彼が死亡したとの
知らせを聞いて、安否を確認するため旅に出る。そして、とある町に辿り着くが、そこでは
獣が出没して人の心は酷く荒廃していた。彼女は浜辺で獣に両親を殺されたハビという
少年と出会い、少しの間に絆を築く。そして獣が恋人に何かしたのではないか、と心配し、
館の場所を知っているハビに尋ねる。ハビはいくつか約束をして彼女と館に同行。
しかし館の窓に恋人の姿を見つけた彼女は館の扉を叩いてしまう。出てきた男は彼女の
探していた恋人「ユキマサ」だったが、ハビは彼をみて「そいつが獣だ!」と叫ぶ。
そして彼女は全く言葉の通じない、狂ったような形相の「ユキマサ」に刀で殺される。
最後まで、彼を慕い続けながら・・・。

ハビ】ポーリーンが行方不明の恋人を探してやってきた町で出会った暗い目をした
少年。彼は両親をベステア(獣)に殺されており、大切な存在を全て奪われた。
預けられた親戚にこき使われる日々。しかも両親が惨殺された日に獣の後を追って
館まで見つけておきながら、獣の目に怯えて逃げ帰ったため町の人々からも冷めた
目で「臆病者、役立たず」と罵られていました。最初は能天気なポーリーンに冷たく
していますが、「一緒に私の国へ行こう」と誘ってくれた彼女に希望を見出します。
ポーリーンが獣の館に行きたいと言い出した時は、頑として場所を教えませんでしたが、
恋人の安否を確認出来ても出来なくても「これを最後に忘れる」と約束した彼女と一緒に
館へ同行。ポーリーンの恋人が獣である事実を知り、彼女を止めますが彼女は殺され、
村に戻った彼は今度こそ村人を説得して獣を狩りに向います。そこには病に伏した白い
髪の少女しかおりませんでしたが、獣と一緒に暮らす女は魔女・・・として殺しました。
そして獣が帰るのを地下で待って、復讐を果たすはずでしたが・・・鎖を解かれてしまった
本物の獣に、たぶん殺されたのでしょう。そこまで描かれていません(-_-;)

貿易商の男・ユキマサ

最初、館に迷い人として現れて、うっかり獣の話をしたばかりに彼によって
殺害された被害者でした。彼は死に際に恋人を残して死ぬわけにはいかないと叫び、
上記したポーリーンの恋人だと思われました。が、違うのですね(笑)フェイクでした。
ポーリーンのところで書きましたが、彼がまず「獣」であり「ユキマサ」でもあります。
殺された男は、そう言えば行商人だったかも(笑)。同じように恋人が居ただけだったかも。
とにかく、このルートでポーリーンの想い人は、獣=ユキマサ(幸正)なのです。
彼はいわゆるサイコキラーだったのです。一応、獣化する前に彼が実は日本人の祖父を
持っており、何らかの理由で日本から追放された日系人の家系で、3代目で、いつかは
日本に迎え入れられたいと望んでいること。ポーリーンの父親である浅間と主従関係で
主に船で生活していることなどが「あなた」の知る能力によって分かります。
実は女中が見せられるのは館にある記憶だけ、なのに対し「あなた」は館へと訪れた別の
人の記憶を過去として除き見る能力を有していて、女中が知らない間に見ています。
今回も、女中は館の記憶を見せているつもりで「あなた」はポーリーンの記憶も併せて
見ていました。だから獣がユキマサであり、ポーリーンの恋人だったこと、彼の船が海で
遭難した後で記憶と言葉を失った彼が町で迫害されて復讐のため村人を惨殺した後で
館へ逃げ込んで助けられた経緯を知っています。しかも、何故か白い髪の少女までが
登場(ここでは盲目)して、獣は再び人らしい心を彼女によって取り戻しかけるのですが、
ユキマサを追ってきたポーリーンの姿が、何故か自分と同じ獣にしか見えず、しかも
全く言葉も通じ合わないため、白い髪の少女を守ろうとしてポーリーンを殺害した経緯も
「あなた」には分かります。耐え難いような悲劇ですが、どうやらユキマサはもともとから
本性としてサイコパスだったようです。そんな彼を人間に留めていたのは、逆に彼が手に
入れるのが難しい平穏を与えてくれるポーリーンや白い髪の少女のような存在、これは
彼にとって正に獣を繋ぐ鎖でした。しかし、ポーリーンと知り合って彼女を慕っていた
ハビが村人と一緒に復讐に訪れ、白い髪の少女を殺した結果、本当に鎖を解かれて
完全に彼は獣と化しました。そこで地下室の扉は閉じられます。先は・・・分かりますね。

白い髪の娘(第二章)】

獣が館に「獲物をよこせ」と願い、殺戮を続けていた時にふらりと
やってきた女性。女中曰く、あの頃のままだそうです。彼女もまた人ならざる気配がします。
長かった髪はショートカットに。ネリーには髪を削がれたようなので、伸びた・・・のか?「(^^; )
このルートでの彼女は盲目です。なので、獣の姿を直接は見えませんが、彼女は彼に
「あなたは私と同じ」だと言いつづけます。そして荒くれだった獣は、それによって平穏を
取り戻しつつありました。ポーリーンが現れるまでは・・・。結局のところ、女中に言わせると
ユキマサは二人とも愛していた訳ではなく、平穏という鎖に過ぎなかったとのこと。
今回は獣の女・・・ということで、復讐に燃える村人に惨殺されましたが、結果的には最後の
鎖を解かれた村人の末路もそれで決した・・・という事です。

女中によると、この後で町が滅んだそうです。こちらはまた・・・サイコキラー出ちゃったw
しかも、そうと知る前のユキマサは少し私の好みのタイプです(笑)「あ、なんかこの固さ、
三成に似てるかも♪」とか思ってワクワクしながら展望してたら、サイコキラーの獣って。
・・・ごめん三成、こんなのと一緒にして(-_-;)
ポーリーンや白い髪の少女は彼にとって何度も書きますが鎖でした。自分が平穏に人と
して生きてくための。なので、彼女たちが側に居ないと彼は本性を顕にして、他人を騙し
弄り殺しています。何も船が難破して町の人間に虐げられたから復讐のために獣化した
訳ではなかったのです。むしろ、獣化していた時が本性でした。それでもその行為自体が
「おかしい」と頭では分かっていて、平穏に人として生きようとしていたことは確かなのです。
ポーリーンにしろ、白い髪の少女にしろ、彼の方が彼女たちを求めたのも事実なので。
女中曰く「手に入らないものほど、憧れる」そうです。確かに(-_-;)でもぉ。
私的には普通にポーリーンとハビが可哀相でした。確かに先に迫害したのは町の人たちで
ハビもそれに加わってたのかも知れないけど・・・うん、それでも可哀相でした(-_-;)
ひとつだけ救いがある?と思うのは、たぶん獣(ユキマサ)は単なる人間なので寿命が
来たら死ぬでしょう。館の女中や白い髪の少女のように「そのままの姿」ではいないから、
もしも生まれ変わったら、もしかしたら違う本性を持ってるかも。もしかしたら、本性は
少し残ってても今度は押さえられる程度のものかも。別に人事ですけど、そうだといいなと
思います。ポーリーンも生まれ変わってて、そしたら・・・まぁ、そこまで上手くいかないか。

次の記憶へと「あなた」を誘い移動する最中で「あなた」は鏡の前を通ります。
例の女中の姿を映さない鏡です。通り過ぎかけた時に白い髪がチラッと見えた気がして
振り返ってみると、呼ばれているような気がする「あなた」。
ここで選択肢が出て「手をのばす」を選ぶと女中が開く扉以外の物語が展開します。
いざ、鏡の中へ・・・・

ジゼル
「あなた」が鏡の中に引き込まれ、最初の見た相手。馬車(?)に乗せてもらって館に
向っている様子。一人で館の中に入り、「誰かいませんか?」と声をかけて見て回る。
教会部屋のステンドグラスに掛かっていた天幕を取ってそれに見惚れる。

ミシェル・ボランジェ

ジゼルが入った館の中に唯一居た相手。極端に光を嫌い、ステンドグラスの天幕を
取ってしまったジゼルに注意するため姿を現した相手。館の灯火は蝋燭とランプのみ。
「この館はずっと昔から呪われている」とジゼルに言い、それが「魔女の呪い」であり、
自分がその魔女「モルガーナ」だと名乗る。

モルガーナ

かつて館に住んでいたと言われる魔女。処刑され、火刑となった後で降った雨に
打たれた村人は全員死亡したとすら噂される呪いの元凶のような存在。
ミシェルの幻聴だと思われているが、実在しているらしい。

鏡の世界から唐突に戻って来た「あなた」は、再び館の女中に導かれ次の扉へと
向います。広間のひとつのであり、開くと噎せ返るような葉巻やタバコの煙の向こうに
ビリヤード台と複数の男たちの姿が見えました。「第三の扉」・・・1869年

ヤコポ・ペアルザッティ

扉の向こうに居た男で、現在の館の主。おそらくイタリア系マフィアの家柄。
故あって社会的地位を得るため、貴族の娘である白い髪の娘を妻にした。
金と権力にしか興味がなく、言動は粗野で非情なタイプ。・・・に見えるのだけども、
実は少し自尊心が強いところはあっても、自分自身に自信を持てない内面とても
繊細な部分がある、心優しい男性。最初は利用目的だけで顔も知らないまま結婚を
決めた白い髪の娘に対しても、「貴族の娘が心にも無い相手と家のために結婚させ
られるのだから心細いだろう」というような気遣いや、結婚式当日に自分に対して微笑みを
浮かべてくれたその事だけで彼女に心を寄せるようになり、特別なプレゼントをしたいと
わざわざフェナキストスコープという紙細工の品を用意した。自分の気持ちが一方通行
だと思い込んでいるため、白い髪の娘に対して素直に優しくすることが出来ない。
しかも、とある理由で白い髪の娘が不貞を働いていると思い込んでいる。
女中であるマリーアとは同郷で幼馴染の気の置けない間柄。友情で結ばれていたが、
とある事情でマリーアが街へと引越し、大人になってから再会し館に雇い入れた。
白い髪の娘との事情マリーアとだけは話をしており、かなり彼女に頼りっ放しになっている。
父親や自国の将来が自分の双肩に掛かっていることを知っているため、シガラミに縛られ
余計に思い悩む日々が続く。本当は友情にも愛情にも厚いが、想ったことを言葉や態度に
出来ないところが難点。実はマリーアが全て画策し、妻とも関係を悪化させた元凶なのだと
最後に知る事になるが、マリーアと子供時分に交わした友情をずっと信じていた。
本性を現したマリーアが、彼が選別に渡した銃の弾丸で撃つがヤコプを仕留めきれず、
ヤコポは「やはり君は男に生まれても統頭の器ではなかった。狙うなら眉間を撃つべき
だったな!」とマリーアの眉間を撃って殺す。それから無事に鉄道は開通し、彼の夢は
叶ったが一緒に喜べる相手は一人もいなかった。妻の行方も全く分からず、彼の周囲には
シガラミのある人間関係で賑わってはいても本当は孤独のまま、生涯を誰にも看取られず
終えた。

白い髪の娘(第三章)

没落貴族の娘で、名はあっても暮らせる金がなくなり両親が決めたヤコポと結婚した。
もちろん資金援助目的であったが、彼女は結婚式当日に若くてハンサムだったヤコポに
心底ホッとしたのと、その後で思わぬプレゼントを与えられた瞬間に彼に恋をした。
そして結婚生活が始まってからも、彼を愛する気持ちはずっと続いた。
しかし、その事を知らないヤコポと、やはりヤコポの本心を知らない白い髪の娘は完全に
すれ違いの生活を送り続け、ヤコポは彼女への愛情が空回りして猜疑心や嫉妬から
彼女を表に出す事を嫌い、逆に彼女は少しでもヤコポと過ごしたい、妻としても役に立ち
たいと頑張れば頑張るほどヤコポの不興をかってしまう。夫から冷遇されている環境は、
他のメイドたちから苛めにあう妻という立場にまで彼女を追い込んだ。唯一の救いは、
ヤコポと幼馴染のマリーアが白い髪の娘に好意的で、いつも場を明るくする話をしたり、
彼女が喜ぶ事をして優しく気遣ってくれる友人関係を保っていることだけ。
しかし、ある日、落ち込んでいた白い髪の娘を励まそうとマリーアがダンスに誘った一件が
返って仇となり、ヤコポは妻が他の男と不貞を働いた帰りだと勘違いし、ますます彼女を
責め苛む。とうとう誰とも会わせないように庭に完全な小部屋を作り軟禁状態。
三食だけメイドに運ばせ、後か完全に外に出さなかった。そこでもマリーアだけが唯一の
救いとなり、白い髪の娘は夫に手紙を書いてはマリーアに託した。
しかし、その手紙は悪意ある改ざんがなされ、ヤコポには妻の不貞の相手への手紙として
届けられることに・・・。マリーアの悪意に全く気付かない白い髪の少女は、それでも夫を
信じ、待ち続けたが心も体もボロボロになり、とうとう夫が夢を賭けた大陸鉄道が開通する
式典の日に失踪してしまった。実は、式典の日に意を決したヤコポが彼女の小屋を訪れ、
誤解を解けば再び関係が改善するはずだったのだが、ここでもマリーアが延期された
式典の日付を白い髪の少女に教えなかったことから、ヤコポが小屋を訪れた時にはもう
何もかも手遅れだった。小屋に残された彼女の宝物であるフェキナストスコープと最後の
手紙を見て全てを悟ったヤコポ・・・彼女は、それきり完全に行方不明となった。

マリーア・カンパネッラ

ヤコポと同郷で幼馴染の間柄。ヤコポとは男女と言う垣根を越えた友情で結ばれていた。
その頃、彼女の住んでいた地域ではカンパネッラ一家が取り仕切って彼女の祖父が顧問、
父親が統頭をしていた。そしてその幹部であったヤコポの父親の一族がベアルザッティ家。
両家のすれ違いに危機感を覚えたマリーアの父親は、彼女と母親を別の街に移住させた。
別れの日に見送りに来たヤコポ。そしてヤコポから選別として拳銃の薬莢をもらう。
永遠に変わらない友情の証として・・・。時は流れ、マリーアはヤコポが主となった館の女中
として雇われる。主のお気に入りの女中として、他のメイドたちからやっかまれる中、彼女は
ヤコポの妻である白い髪の娘とも友好関係を築いた。明るく優しいマリーアは、何故かいつも
妻に辛く当たるヤコポと白い髪の娘の仲を気にし、取り持つように働いていた・・・はずだった。
実は彼女はヤコポの一族(父親)が、自分の祖父と父親の乗っていた馬車を爆破して二人を
殺し、権力を奪い、カンパネッラの勢力を削ぎ落としたお陰で自分が女中などするまで身を
堕とした事を恨んでいた。そしてヤコポを苦しめるためヤコポと白い髪の娘双方に全く違う
言葉を掛け仲違いするよう仕向けた。妻の不貞に悩むヤコポ、自分に全く興味を持たない
夫・・・という図式を作り上げ、事はマリーアの思うように転がっていく。
ある日、マリーアは地下室の掃除をする際に「我々は、魔女の呪いでしぬだろう。けれど罪
なき者のために、罪人を明らかにする必要がある。魔女よ、どうか呪い続けるなら、その
系譜だけを呪って。その罪人たちは、この館にいた者。私は違う」と言う文字が床に書かれ
ているのを見つける。その字は自分のものと酷似しており、マリーアは不気味さを覚えた。
しかも側には白い髪の娘とそっくりな肖像画があり、顔が切裂かれていた。
マリーアは文字の事を忘れ、肖像画を白い髪の娘の小屋に届け、彼女の心にトドメを刺す。
全てが露見した後、ヤコポを撃つが仕留められず逆にヤコポによって眉間を撃ちぬかれて
死亡した。子供の頃は、本当に純粋にヤコポと友情を育んでいたのは違いないと思われる
が、その後の祖父と父親の死、自身の転落人生で歪んでしまったと思われる。

ここまでが一応、第三の扉のお話です。正直私はこの第三の話が一番辛かったです。
ヤコポと白い髪の娘はお互いに想い合っているのに、どうしてもお互いかみ合わない。
言葉足らず、理解しようとする姿勢不足(まぁ物語の展開上、致し方ないとしても確かに
実際に有り勝ちな話です)で、そこに周囲の悪意が加わって最悪・・・(-_-;)
本当に、人って簡単に人を陥れたり出来るんだなぁ。と逆に手助けだって出来るのに。
館の女中が「言葉で言わなければ想っていても伝わらないですよ」って、本当になぁ。
分かっていても、出来ないんだよね、これが。信じきっていた友人のマリーアが間で
暗躍することもあって、お互いの愛情がまったく相手に伝わらず、どんどん悲劇的な展開
になっていくので、涙出ました(ToT) 必死に夫を気遣い信じ、待って手紙を書く妻と、
その手紙が自分宛だと全く思っていない夫の苦悩、全てを観念して会いに行った時には
全てが手遅れって・・・ああ、無情!(ー'`ー;) 孤独に生涯を終えたヤコポも可哀相。
行方不明の白い髪の娘については、第一の扉でも行方不明だった(第二では殺された)
ので、まぁ・・・また別の形で登場するんだろうなぁ。

扉から出た途端に館の女中と手が離れ、彼女が居なくなります。慌てる「あなた」に部屋に
掛かっていた絵画が話しかけてきます。そう絵画が!です。風景画の男となっていますが、
たぶん・・・昔、画家だったという白い髪の娘の父親の念じゃないかなー。
「あの子に謝ってほしい」とか言ってるし。絵を描いたことを後悔してるって話も、
あれですよね?てか、絵を描いたことを後悔って・・・その前に不倫したことは後悔
しないのね「(^^; )絵画から寝室の鍵を貰って(館の女中が捨てたらしいが、後で彼女に
それを聞いても覚えていない)女中を探しがてら、あちこち部屋を回る選択が出ます。
全部回ればいだけなので困りませんが、一応セーブw 
その後、無事に館の女中と再会し、最後の扉へと向います。
「第四の扉」・・・1099年

「・・・え?1099年?」と一瞬、見間違いかと思いましたが、その後で館の女中の口から
時代が中世であることを知らされたので、やっぱり間違いじゃなく今まで見聞きしてきた
扉の中の時代から一気に遡っています。館の女中曰く「これが始まり」とのこと。

白い髪の娘(ジゼル)
扉を移動する最中の鏡の場面で、一瞬だけ登場した彼女、それがジゼルです。
しかし誰かに追われて館に来たのではなく、彼女は馬車に乗って館に来ていたはず・・・
どこか食い違う記憶?これの意味するところとは・・・なんなのでしょうか。

ミシェル
ジゼルと同じく鏡の中で一瞬だけ登場した館に住む青年。白い髪と赤い目をしている。
そして館だけでなく、自分も呪われている存在であり「魔女モルガーナは自分」だと
名乗った。そう、ジゼルではなく魔女を名乗ったのはミシェルなのです。これもまた
食い違う記憶のひとつ、これの意味するところは、なんなのでしょうか。

白い髪の娘が命からがら森をぬけて、やっと館に辿り着きます。彼女はまさしく村人たちに
「魔女」として追われる身でした。年齢は今までで一番若く、十代初めのころだそうです。
彼女は館の中へと逃げ込み、光の差さない暗闇の中で蝋燭を手に現れた青年ミシェルと
出会います。そして彼に「館においてください」と懇願しました。ミシェルは最初、それを
断ります。ここが呪われた魔女の館であること、自分も呪われた存在であると断りますが、
しかし外で迫害を受けている事実を訴え「私は魔女扱いされているのです。だからここに
置いて欲しい」と懇願する彼女に、ミシェルも折れ、勝手にするよう言い置いて去ります。
娘は居候するだけでは悪いと思い、掃除等を始め書庫で見つけた本を取ろうとして落ちて
きた本の下敷きになりました。そこに来たミシェルは決して彼女を助けようとしません。
実は、ミシェルは生まれた時から触れた他人の生命を枯らして殺してしまう特殊な存在
でした。最初に母親、次に乳母・・・偶然で済まされなくなり、ミシェルは他人との接触を
禁じられますが、それでも不慮の事故や他人の好奇心などから完全に避ける事が出来ず、
やはり次々と意図せず殺める結果に。ミシェルは自ら望んで館に閉じ篭るようになりました。
その経緯を娘に教え、去るように言いますが逆に娘からは「私たちはお互いに孤独が
一番怖いことを知っている」と尚も一緒にいると言われます。
しかも娘から好意を告白され、ミシェルは戸惑いながらも考えて娘を館に置ける方法を考え
彼女にアクセサリーを模した鈴を持たせます。不慮の事故を防いで接触しないで済む様に。
そして次第にミシェル自身も娘に「居て欲しい」と思うようになります。決して触れ合う事は
出来ませんでしたが、二人の心は確実に結びつき合っていきます。しかし、この館が住む
人を不幸にするのは止められず、ある日、魔女の噂を信じ頼ってきた浮浪者の男を、娘は
不用意に扉を開けて招き入れてしまいました。その結果、娘は浮浪者に襲われ、それを
助けようと浮浪者に向ったミシェルはナイフで刺されました。浮浪者の顔を素手で掴んで
死ぬ寸前まで枯らし、浮浪者は文字通り命からがら逃げていきました。ミシェルは初めて
自分の力で守りたい人を守れたと誇りに思うのですが、ミシェルの血が娘の頬に一滴だけ
付いてしまい、それから娘は弱っていきました。そして瀕死の状態になった頃、逃れた
浮浪者が死ぬ間際に村人に館と魔女の存在をしゃべったため、村の男たちから館は
襲撃を受けます。娘とミシェルは一緒に死ぬ事を選び、館の天辺にある物見の塔に行き
初めて触れ合いました。そして娘は死んだのです。ミシェルは後を追うつもりでしたが、
ミシェルの死体を誰にも穢されたくなかったので扉の外に出て村人たちに惨殺されました。
彼は死に際に多くの血をわざと流し、村人全員を道連れにしたのです。
しかし悲劇はそれでは終らず、ミシェルが息絶えた後・・・死んだはずの娘が息を吹き返し
たのです。何故なのかは分かりませんが、館の女中の推測だと「愛した者にはきかない
呪い」だったのかも。とにかく皮肉にもすれ違った二人・・・そこで嘆く娘に声を掛けたのが
館の魔女・モルガーナでした。もちろん、館の女中はモルガーナです。
彼女は娘に「彼にもう一度会いたいか?」と聞き、自分ならその願いを叶えてやれると言い
ます。しかし魔女に願いを叶えてもらうには代償が必要だと知っていた娘は逡巡します。
それでも彼に会いたいと想う気持ちが勝り、娘はモルガーナにそう答えました。
モルガーナは「彼女が生まれ変わっても彼女であること、二人の永遠の再生」を約束し
ました。そして扉が閉じられます・・・館の女中であるモルガーナは言います。
「もう、あなたが誰か分かったでしょう?」と。そして、モルガーナは、どんなに頑張っても
彼とは巡り会えず、違う人を信じても報われない記憶を悼み、「私があなたを幸せにする
から館で一緒にいましょう」と提案します。ここで選択肢3つ!

「提案を受け入れる」を選ぶとエンディング【1.蜃気楼の囚人】となり、モルガーナで
ある女中によって館で世話をされて永遠を過ごすことに。「提案を受け入れない」
選ぶと、とにかく館から、そして女中から逃げなければ!(ミシェルが最初に自分が
魔女だと名乗ったこと、風景画の男が美しい悲劇は嘘だと忠告してくれていたことなど)と
外へと続く扉を開けて光の中へと逃れます。モルガーナは館から出られず、目覚めて
みるとそこは近代に近い風景。恐らくパリ。彼女は学生で通学途中に居眠りをして何か
怖い夢を見ていた・・・と思い、いつも通りの風景に少し違和感を覚えます。
そして学校に向う途中ですれ違った男性にときめくのです。それはミシェルでした。
彼女はミシェルを追いかけますが、彼は彼女の声が聴こえない様子で「今度は間違え
ないようにしなければ、最大の過ちを犯した」とつぶやきながら信号で車に轢かれ、
娘はそれを見て「え?」と驚いたところで終ります。
これが【2.君を向かえに】です。

どうにも、ミシェルはミシェルで何度も再生を繰り返しながら二人は完全にすれ違って
いるように見えます。そしてその邪魔をしているのが、どうにもモルガーナであるように
思えます。それと気になるのが、ミシェルにしろ白い髪の娘にしろ生まれ変わるたびに
違う相手に恋をして全て悲恋に終っているようなのですが・・・これって彼ら自身の欠片
なんじゃないのか?と。うーん違うかも知れないけど、なんとなく全てが彼らと違うけど
彼らのような気がしてなりません。元は一つ、または一人だったものが、パズルピースの
ようにバラバラになって、そしてパチンパチンとハマっていくような感じがします。
先に進むためには最後の選択肢である「まだ終りにはできない」を選んで先へと
進む必要があります。ここまでプレイしてきて、さすがにちょっと背筋がゾクッとしました。
確かに何とも言えず良く出来ているシナリオだなーと!すごく単純なようでいて、人生の
縮図のような。運命の赤い糸なんて、もう誰も信じてないようでいて、きっと心の奥底では
誰もが信じているんじゃないか?みたいな。人は「本当の相手」を生まれてずっと探して
いるけれど、違うかも知れない人と出会って一瞬の優しさに信じて裏切ったり裏切られ
たりして傷ついて、諦めて、でもまた同じ言を何度も繰り返していて・・・。
それは何も恋愛だけに限らず、自分の親しくしている人、もしかしたらすれ違っただけの
人とだって同じなのかも知れない。そんな事を、ふっと思わせてゾクリとしました・・・が、
まだ、これでも序盤だったのか!?ってくらい・・・先がありました!!

選択肢で「無理強いはしない」を選ぶと、せっかく思い出しかけたものを押し戻し、
結局は白い髪の乙女=旦那様=あなたということになります。
【3.ボンジュール・プーペ】というエンド。
「それでも思い出さなければ」を選ぶと、「あなた」の曖昧だった姿の輪郭が
はっきりと浮き彫りになります。それは館の女中が言っていた白い髪の娘・・・ではなく、
華奢ではあっても、れっきとした男性の姿でした。第四の扉で登場したミシェルが「あなた」
の本当の姿であり、館の女中=モルガーナを名乗っていた女性こそがジゼルでした。
しかしジゼルは記憶を失っており、自分が館の女中だと思いこんでいます。
そして最初に見た第四の扉での出来事が嘘である・・・とミシェルは指摘し、二人の間に
本当に起った出来事の記憶を取り戻そうと提案。そして第五の扉が開かれます。
「第五の扉」・・・1099年

鏡の中で見た光景通り、最初ジゼルは馬車に乗って館へとやってきました。そして彼女
の見た目は黒髪のショートヘア、普通の色の肌、翡翠色の瞳でした。彼女はどこから
見ても普通の健康的な女性。性格は明朗快活で、少しポーリーンと被ります。
そしてミシェルとの出会いは、ほぼ同じ。教会の垂れ幕を取って見惚れていたジゼルの
前に蝋燭を持った陰鬱そうなミシェルが姿を現します。しかし最初の第四の扉で語られ
たような白い髪の娘の純粋さがミシェルの心の闇を払い両想いになり、心無い村人の
襲撃を受けて死に別れる悲恋などではなく、ジゼルはここに来る前に重たい事情と心に
深い傷を負っていました。ジゼルは元々商家の生まれでしたが父親が死んでから母親と
姉の三人で苦労をしました。まずお金に困っていました。姉が貴族の息子に見初められて
結婚を希望していましたが、お金がないことで息子の親族に反対され、そんな時にジゼル
はミシェルの実家であるボランジェ家に女中として雇われることにまりました。これで何とか
金銭を稼ぐ当てが出来たものの、実はボランジェ家の当主(ミシェルの父親)アントナンは
最初からジゼルの体が目当てで彼女を雇ったのでした。家族を盾に取られ無理やり乱暴
されたジゼル。しかも性的な暴行だけでなく、アントナンはナイフを彼女の体を傷つけて
恐怖と屈辱を与え続けました。もちろん周囲には内緒で。しかし、事は露見し奥方(ミシェル
の母親)のリディの知るところとなり、それ以前に心を病んでいたリディに処刑されそうに
なったジゼルは僻地(館)送りで命だけは救われました。そういう事情があったのですが
ジゼルはそれをミシェルに打ち明けられません。当然と言えば当然です。初対面の相手
に、しかもこの時代の事ですから貞操観念も硬かったのでしょう。それにミシェルは狂った
母親からの情報でジゼルの方が父を誘惑し関係を持った、その上、自分の事を探ろうと
していると敵愾心をむき出しにしてナイフまでジゼルに向けたので、ジゼルは館から逃げ
行き倒れて居たところを村人に救われます。生きる気力をなくしていた彼女に、その男・
アメデは優しく接し、村に迎え入れてくれました。村は領主の管理を受けておらず税に
苦しんでいない分、とても穏やかな自給自足をしている場所で、彼女は暫くそこで平穏
な暮らしをするのですが、村が領主に発見され5年分の重い税を押し付けられ村人の
心は荒んでいきました。その捌け口はよそ者のジゼルへと向かい、自分を助けてくれた
アメデも求婚に応えないジゼルに意趣返しするように彼女を糾弾し、盗難事件の犯人と
して酷い折檻を受けます。彼女はたまらず館に財宝があるから、それを売ればいいと
提案し館へと村人を案内してしまいます。しかしミシェルの姿を見て、ミシェルの恫喝に
怯えた村人はジゼルを生贄に残し逃げ帰って行きました。当然、村人を連れて来た
ジゼルを責めるミシェルですが、ジゼルは「私の言う事を誰も信じてくれないなら、
もう殺してください!」と泣き叫びます。彼女のその姿にただ事ではないものを感じて
ミシェルはやっとジゼルと向き合って話をします。ジゼルも自分がどんな扱いをされて
ここに至ったかを話ます。ミシェルは全くジゼルに非がないこと、それどころか自分の
父親が彼女にした事にショックを受け罪悪感すら覚えます。そのミシェルの気持ちが
ジゼルに再び笑顔と生きる気力を取り戻させ、彼女は改めて館に置いて欲しいと望み、
ミシェルとジゼルの第二の、そして新しい関係がスタートしたのでした。少しずつ館は
光と笑いと幸せに満ちていきます。ジゼルもミシェルもお互いに友情を感じ、そして
男女の愛へと変わりました。互いに想いを伝え合います。ミシェルは第四の扉のよう
に触れて相手を殺すような力は持っておらず、白い髪と赤い目と肌の色から生まれて
すぐに母親が「悪魔を生んだ」と心を病んでしまい、父親から死を望まれたために
館へと逃れた経緯がありました。二人の兄(ディディエとジョルジュ。どうやらジゼルに
ミシェルの面倒を見て欲しいと手紙を書いたのはディディエらしい)は父親が死んだら
弟であるミシェルを本宅に呼び戻す約束をしていました。
そしてアントナンが死んだ知らせが来て、二人は恋人、果ては婚約者として本宅に戻り
幸せな未来を思い描くのですが・・・事は、そうなりません。
ある日、館には甲冑を着た騎士が退去して押し寄せ弓や槍、剣で二人を追い詰めます。
物見の塔へと逃れた二人。死んでも一緒にいたいと望むジゼルに対し、ミシェルは
謎の魔女の声を聞いてしまいます。そしてジゼルだけでも生き残らせたいと望み、
ジゼルが止めるのを振り切って扉を出て騎士に殺されました。扉は、何故かどんなに
ジゼルが叩いても開かず、声も聴こえなかった様子。ジゼルが生きる事を望んだ
ミシェルでしたが、一人残されたジゼルは絶望します。ここまでが、本当の二人の記憶。
私、ずっと昔から言い続けてるし今も思っているんですけど「守り手が先に死んだら
ダメ!!」です。「守るよ」って約束したら先に死んで守るのが約束のように思っている
守り手が多いように思うんだけど、いや実際、そうしないと仕方が無い場合もあるとは
思うんだけど・・・それは、きっとダメなのです。死んだら、守り手の負けですね。
「死んでも守る」んじゃなくて、「死なないように守る」じゃないと(笑)。
残されたら、結局死んじゃうよ?その人。体が生きてても、ジゼルみたいに心が先に
死んじゃう場合もあると思う。だから、守るって口にした人は先に死んだらダメ。

館の女中となったジゼル・・・彼女が「何故今のような姿になったのか」がこの先で
語られることになります。それは死んだミシェルの知らない、ジゼルの物語。
「第六の扉」・・・1099〜????
ミシェルが騎士に殺され、連れ去られた後・・・どのくらい経ったのか分かりませんが
扉が開いてジゼルは扉の外に出ます。残っていたのはミシェルの服の切れ端と、
それにこびり付いてパリパリに乾いた血、大量の流血の残骸だけでした。
その布を握り締めて哀しみに暮れるジゼルの耳に、魔女モルガーナの声が聴こえ
ます。ミシェルが聴いていた声、ジゼルが孤独で心を病んだミシェルの幻聴だと
思い込んでいた声・・・本当に存在したのだ、とジゼルは知りました。
モルガーナは、嘆き悲しむジゼルに提案をします。自分に協力し共に来るのなら
ジゼルを永遠に生き長らえさせ、いつか再生して現れるだろうミシェルを待つのを
手助けする、と。魔女の甘言に、頷いてしまうジゼル。この時、ジゼルは21歳。
彼女が普通の人間として生きてきた最後の年齢という事になります。
最初の100年、1200年まで彼女は日付を数えていました。しかし、それ以降は
人の生きられる年月ではないことで気が狂いそうな気がしてやめました。
更に100年、1300年には自分が本当はどんな人物だったのか思い出せなくなり、
更に100年、1400年には完全に明るさを失い、モルガーナの意見に従って新しく
メイド服を作りました。更に100年、1500年になると彼女の精神は本当にギリギリの
一線を保っているだけで、少しのきっかけで崩れそうなほどに。
そして、1591年・・・館に再び光と風が溢れ、館に人間が訪れます。それは初老の
男で、名はヘイデン・ローズ。第一の扉で登場したネリーとメルの祖父でした。
ヘイデンは貴族でしたが少し偏屈なところはあっても、とても紳士的で女中としては
まだまだ成っていない館の女中(ジゼル)に正しい礼儀作法を一から叩き込みます。
時には厳しく怒鳴られますが、館の女中はそれが自分のためを思ってやってくれて
いることを理解していたので逆に嬉しく思っていました。数百年を経た平穏な日々に、
館の女中は、このまま待ち人の事を忘れて彼に仕える日々を送ってもいいのでは
ないかとすら思い始めます。それほど、もうミシェルの面影は薄らいで、想い続ける
事に疲れ果てていたのだと思います。ヘイデンは荒れ果てていた庭に手を入れて、
見事な薔薇園を作り館の女中に見せてくれました。館の女中もミシェルにあげた、
そして彼が自分の髪に挿してくれた赤い薔薇の事を思い出します。ヘイデンは、
二人の孫(一瞬、三人と言いかけた?)のために、この薔薇園を作ったのでした。
2年ほど、そんな平穏が続いた後で、ヘイデン宛てに本宅で暮らす疎遠のはずの
息子から贈り物が届きます。ティーセット、紅茶と砂糖でした。実は家族思いの
ヘイデンは喜んで紅茶に砂糖を入れて飲みますが、それには毒が入っていました。
一命は取り留めたものの、寝たきりになったヘイデン。悲しむ館の女中に、彼は
待ち人を待ち続ける事に疲れたなら、自分の柔らかい本心を守るための殻を作れ、
と忠告し、もしも自分が死んだら毒によってではなく「美しい女性に看取られて死んだ」
と嘘を流すように言い残し、翌日自殺しました。そして館の女中は、その様にします。
1603年にメルとネリーが館にやってきます。そして館の女中はモルガーナが待って
いたのがメルであると知るのでした。そしてこれから第一の扉で見た悲劇が起きます。
この時、もう殆どミシェルの姿を思い出せなかった館の女中は白い髪の娘を見た
瞬間に「この人が私の待ち人?」だと思います。同じ髪、瞳だったから・・・性別が
違う事に気付かないほど館の女中は壊れてしまっていたのです。しかも白い髪の
娘は自分の名を「ミシェル」だと名乗りました。完全に自分の待ち人だと思い込み、
待っていた事を告白した館の女中に、白い髪の娘は「不思議な方だと思うが、貴女の
事は知らない」と答えます。自分を忘れてしまったのか、もう興味がなくなったのか
と落胆する館の女中に、モルガーナは「次は思い出してくれる」と励まします。
そして、あの悲劇が起った後でメルはすぐに家を出て神父になりました。ネリーの
方はどうやら、その後に病気で亡くなったようですがメルはその時にすら戻っては
来ませんでした。そして、第二の扉の1707年、記憶を失くし自分を獣と思い込んで
暴力を振るい続けたユキマサは、館の女中に殺した貿易商の男をバラバラに切り
刻ませると鍋で煮るように命令します。言うとおりにする館の女中ですが、途中で
ユキマサは館の女中すらもナイフで刺します。が、血も出なければ痛がりもしません。
自らを獣と呼ぶ男にすら気味悪がられる館の女中。そこへ第二の白い髪の娘が
現れます。「この館に来た事がある気がする、貴女のことも懐かしい気がする」と
言い、名前も「ミシェル」と名乗ります。やはり自分の事を覚えていない相手に落胆
しながらも、何となくまだ繋がりを感じている館の女中。この時、獣の耳に色々と
吹き込んでいたのは館の女中ではなく、モルガーナの方です。私はユキマサが
使っているのが血を欲する妖刀とかそんなオチかと思っていましたが(笑)。
自分を見もしない白い髪の娘を見るのが嫌で、館の女中は姿を現さなくなります。
そして第二の扉も悲劇に終ります。次の1863年、ヤコポが妻となった白い髪の
娘を館の女中に紹介する場面で、娘は「初めまして」と言いました。その言葉に、
館の女中は完全に絶望します。今までは多少なりとも何かを自分に感じてくれて
いたのに、「初めまして」と言われたからです。モルガーナに「もう私を消し去って」と
懇願しますが、ここでモルガーナはジゼルという人物など最初から居なかった、
今まで見てきた悲劇は全て他人の記憶であり、館の女中である「あなた」は最初から
魔女モルガーナだったではないか、私はあなたが記憶を失くしてしまったために
分裂した片割れだといいます。それを信じてしまう館の女中・・・そして、ヤコポの
妻であった白い髪の娘が失踪してから40年後、館の女中はヤコポに何故故郷に
帰らないのか、何故新しく家族を作らないのかと問います。未だに妻の帰宅をまって
いる彼を「可哀相な人」と館の女中は言いますが、ヤコポは「私には君の方が、
可哀相に見える」と言われます。そして、ヤコポはたった一人で病死し、遺言によって
葬儀すら成されませんでした。他のメイドが館の女中に「これでいいのでしょうか?」
と聞きますが、彼女は「彼を見送る人間は、この世にいない」と答えます。
そして、例の第四の美しい嘘の悲劇の後・・・第五の扉の後へと繋がります。
全ての記憶を取り戻したジゼルは、「もう私は昔のジゼルではない、今でも私が
あなたを待っている、愛していると本気で思いますか?憎んでいると思いませんか?
何故、ずっと迎えにきてくれなかったのですか?」と問います。
次の選択肢は時間制限があります!!本当に数秒も猶予がないので!!
とりあえず、一回時間切れでエンド【4.躊躇】を見る事に(笑)。館から放り出された
ミシェルの魂は一人で暗闇に落ちて行きます。せめて彼女に「自分は今でも好きだ」と
伝えたかったとそう思いながら。しかし、館に残ったジゼルは彼を敢えて突き放し
解放したのです。その事をモルガーナに指摘され「私が彼を憎むはずもない、
嫌うはずもない」と答え、「何故?」と問われ「貴女には分からない」と言います。
モルガーナは、その答えに少し不満そうですがすぐに笑って「どうせまた貴女は自分を
忘れる」と言い、終ります。もう一度書きますが、選択肢を押せるのは本当に数秒です!
出たらすぐ押して!!「否定する」
を無事に選べると先に進めます。
その後も幾つか強制選択があって、ジゼルが20歳(もうすぐ21歳)であること、ミシェル
が27歳であること、家族のことや好きな物など会話をしますが、再び二人を引き裂く
ようにモルガーナの影が姿を現し、ジゼルを連れ去ってしまいます。一人目覚めたミシェル
は、館の中が血まみれで床にも大量の血が溜まっている中、必死にジゼルを探します。
ですが、物見の塔に向う扉には何故か3つの鍵が掛かっており、向かう事が出来ません。
風景画に事情を聞こうとしますが、風景画も血に汚れて要領を得ません。が、何とか塔の
鍵を持っているのが3つの扉にいる影の人物たちだと知ります。開いた扉の順番通りに
回らないと、いきなり業の深い場所から行くと失敗すると忠告を受けます(無理してそこを
回るとデッドエンドですw)ので、薔薇園から。そこでメルに会い、話を聞き鍵をくれと言うと
茨の中に落としたというのでミシェルは傷つくのを厭わず必死で探します。結局、鍵は
やはりメルが持っており、「助けてくれないと思ったから」と。殴ろうかと思うミシェルw
とにかくメルの鍵は受け取ります。そして地下室へ向いますが、獣は人の姿に戻っており、
存外簡単に鍵を渡してくれました。「もう俺には必要ない」と、全てを放棄している様子。
あとは自然とビリヤード室へと向かい、そこでも鍵は簡単に手に入りますが、ヤコポの
影は「俺も魔女のもとへ連れて行け」と要求。しかしそれは叶えられず、ミシェルは一人で
螺旋階段を上ります。途中でモルガーナの精神妨害に遭い、何度もくじけそうになりますが
とうとう物見の塔の前まで着ました。しかし、モルガーナはミシェルが一番隠したかった彼の
過去を、その秘密を否応無く暴きます。それは、ボランジェ家に一人の白い髪と赤い瞳、
透ける肌をした「女の子」が生まれたところから始まります。両親は、彼女を天使だと喜び
特に母親は「Michelle」と名付けた。彼女は白い肌ゆえか陽の光に弱く、外出こそ出来ない
身だったが二人の兄・ディディエとジョルジュにも可愛がられ幸せに育っていた。
12歳になった彼女は、見た目にとても可憐な少女に育った。チェスを好み、兄のような立派
な騎士になる事を夢見る少し風変わりな少女に・・・。Michelleは自分の心の有り様と体に
強い違和感を覚えながら、それでも大切に思う家族と一緒に暮らせる日常にいた。
そこへ、まずエメという女性が現れる。それは次兄ジョルジュの婚約者だった。エメはとても
清楚で、それでいて優しく笑う女性だった。何故かエメにときめきを覚えるMichelle。
小さな違和感はどんどん大きくなり、とうとうMichelleはエメに口づけをしようとしてしまう。
それは未遂に終ったが、エメは驚き部屋を出て行った。そして、その事をなんとエメは
長兄のディディエとの密会の時に話し、その現場を偶然にもMichelleは聞いてしまう。
エメとディディエの不義を知っただけでなく、エメが自分を「気持ち悪い」と思っていた事を
知ってショックを受けたMichelleは、それから程なくして高熱を出す。そして熱が下がった
頃にその変化は起きた。今まで単純に細っそりとした少女体系だった彼女の体、そして
何より声がまるで男性のように低くなり、相変わらず華奢ではあったが明らかに女性の
それではない筋張った肩、胸となり彼女の体は一見「男」のそれになっていた。
全ての違和感「そうか、自分は初めから男だったのだ!」と自覚して、それを喜ぶMichelle。
いや、Michel。病気のためと隔離されていた部屋を飛び出し、一家団欒の場へ踊りこむと
体を皆に見せ自分が男だったのだと叫ぶ。しかし、その場の全員が凍りついた表情を
浮かべた。そして何よりもエメは再び「気持ち悪い」と彼を嘲った。「だって、あなたの体には
何もないじゃない」と。意味が分からずうろたえるMichel。再び彼は今度こそ監禁状態になり、
何日も水も食料も与えられず放置された。死を覚悟した頃、エメが食事を持ってやってくる。
しかしそれは救いの手ではなく、彼を弄り屈辱をあたえる残虐な日々の始まりだった。
エメは、あらゆる方法と言葉でMichelの体と心を傷めつける。最初こそ怒りで反発していたが
最後にはエメに恐怖し屈服してしまった。そして苛めに飽きたエメも来なくなる。
使用人の男性が食事を運んできた時に、Michelは無理やり彼を裸にし自分と何が違うのか
確認する。そして、男だというなら自分に無くてはならないものが下半身にないことを知る。
どんなに外見が男に見えても、心がどんなに男だと訴えても、Michelの一部はMichelleの
ままだったのだ。自棄になった彼は使用人を傷つけようとして捕まり、再び監禁される。
しかし、父親がMichelleを処刑しようと目論んでいることを知った二人の兄は、さすがに
肉親殺しを見過ごす事が出来ず、Michelを部屋から出すと馬車に乗せ、館へと逃亡させた。
父親に知られる訳には行かなかったため、二人の兄と母親と数少ない使用人だけにしか
事情は知らせず、幽閉という形になった。それが、呪いの館であった・・・。
最初のうちは、ミシェルは兄の言葉を信じて父親が亡くなり自分が再びボランジェ家の末の
息子として迎えられる日を夢見ていたが、8年が経過する頃にはすっかり絶望していた。
しかも息子が呪われていると信じて疑わない母親の要望で次兄ジョルジュが書いた成長した
Michelleの肖像画が送られてきて、ミシェルは更に傷を深める。その絶望と呪詛は眠って
いたはずのモルガーナを蘇らせてしまう。彼女の「呪いましょう、殺しましょう」と言う声に
付きまとわれ、どんどん追い詰められるミシェル。使用人にも狂人扱いされ、とうとう自分が
男だという一線だけは譲らなかったが、それ以外の「呪われた身である」という事を受け入れ
完全に心を閉ざしてしまう。そこへやって来たのがジゼルだった。
暴かれた秘密、ミシェルが完全な男性ではないこと・・・を知ったジゼルが彼に「嘘つき、
気持ち悪い」と言い放つとミシェルは真っ暗闇に落ちて行く。しかもモルガーナは容赦なく
ミシェルがジゼルを守って死んだ後に扉の向こうで自分を刺し貫いた騎士の剣の持ち主が
長兄ディディエであった事実や、その後にディディエがミシェルの体を裸にし十字架にかけ、
腐るに任せて3日曝し、実の母親の手で呪いの言葉「これは私の子供じゃない」と言われ
火刑に処された場面すらも魂となって見ていたミシェルに、もう一度それを見せます。
とうとう魂までボロボロと崩れ落ちるミシェル・・・選択肢が出て「諦める」を選ぶと、【5.
それでも諦めないで】
となります。時間切れで、消えそうになった時、光が後ろから彼を
包みます。「惑わされないで!本当の私の声を聴いて」と。それはモルガーナが見せた偽の
ジゼルではなく、館の女中でもあった本物のジゼルでした。そして「私は絶対にあなたを
拒絶なんかしない」と心を伝えます。ミシェルも、本当は「あれが偽だと分かっていた。
分かっていながら崩れる自分の弱さが許せないんだ」と嘆きます。二人は見えない相手を
感じながら抱擁し、二人の次の世のためにモルガーナすら救おうと決意します。
「やれるものなら、やってみなさい」と突き放すモルガーナ。気付けばミシェルは1099年の
モルガーナが死ぬ3日前にいました。しかも何故か生身の体で。心の中ではジゼルとの
繋がりがあり、彼女は館とは別の闇の中にいましたが会話も出来ました。
二人は一計を案じ、まずメルとネリーと話をして鍵をもらい、次にマリーアとポーリーンに会い
第一と第二の彼らから贖罪の言葉と鍵を得ました。一番業の深い相手である第三の扉の
領主は、実はモルガーナを虐待して血を得ていた最初の領主とは別人で、本来ならモルガーナ
を救った貧民街の青年であるヤコポを彼女が最終的に勘違いし、もう後戻り出来なくなっていた
ヤコポがそのまま利用し続けた結果、呪われたのでした。ヤコポの真実を暴こうとしたミシェル。
その前の選択肢で「突き飛ばす」を選ぶと領主が真実を語る前に死んでしまい、仕方なく
メルと東洋人の男とミシェルがモルガーナを救出に向いますが、三人の男というだけで
もう目が見えなくなっていたモルガーナの呪いを受けてミシェル本人が呪われてしまいます。
【6.とこしえの闇】です。無事に領主の記憶=彼が本当は最初にモルガーナを搾取して
いた領主とは別人で、本当はその領主からモルガーナを救った貧民街の青年・ヤコポで
モルガーナを愛していたこと、彼女の12歳の誕生日にそれを告げるつもりだったこと、しかし
盗賊に襲われ彼女は行方不明となり、自分に力があればとの思いから詐欺まがいの事を
してまで領主の座を手に入れたものの、そこは猜疑心と裏切りの日々が待っていたこと。
そして本来の目的を忘れ、知らずに魔女と呼ばれる老女を金儲けの道具にするつもりで
連れて来てみれば、それが自分の何より大切にしていた少女であったこと、しかしもう後に
戻れなかったことなどが判明します。モルガーナの元を訪れた3人の男とミシェル。
モルガーナは人格崩壊を起こし、白い髪の娘とモルガーナ(同一人物)が会話をしていま
した。ミシェルは3人に贖罪を述べさせます。モルガーナはミシェルを「天使様」と呼び、
ミシェルは「今だけ、私はお前の魂を救済にきた天使だ」と名乗ります。安堵して天へと
召されるモルガーナ。全てが終わった事を知り、3人の男は刑に服す事を約束します。
そしてミシェルは戻ったのですが・・・そこには血を吐いて倒れ付す村人、メル、ネリー、
修道女を守ろうとして死んだ東洋人の男、民衆に殺されたであろう領主ヤコポの変わり
果てた姿がありました。「変わったのではなかったのか!?」とうろたえるミシェル。
しかし、それは全てが過去の事であり館で見た扉と同じだったのです。過去は変えられ
ない。しかし、その事実はモルガーナを確実に変えました。「許せないけど、もういい」と
3人の男の魂を解放する決意をし、それぞれに会いにいくと「さよなら」を告げます。
この時点で、既にジゼルの存在を感じられなくなっていたミシェルですが「必ず会えると
信じている」と。そしてここで最後の選択肢「外に出る」をすぐ選んでしまうと、長兄の
ディディエが扉の向こうにいてミシェルの処刑が再現されてしまい【7.別離】となります。
結局は兄たちも闇に囚われており、そこから抜け出せなかった事を知ったミシェルは、
長兄ディディエと心中する感じのエンディングです。「まだ寄るところがある」を選ぶと
風景画の前に行き、それが次兄ジョルジュであることを知ります。ミシェルに絵を送った
事や、性別の事を軽く考えていたこと、幽閉を解いてやれなかったことを深く後悔して
居た彼は、本当に絵に魂を乗り移らせて館に来たのです。その事を知ったミシェルは
それでも喜びました。そして彼の絵を持って館を出ると、先のように長兄ディディエに
襲われます。「仕方ないなぁ」と長兄の剣の前に絵が勝手に飛び出して「ごめんね」と
ミシェルを庇い切られ消えます。「長兄の名を呼んでやって」と言い残したジョルジュ。
ミシェルは声を挙げて「ディディエ」と叫ぶと、先には見られなかったディディエの目に
光が戻ります。そしてミシェルを見て詫びると泣くのです。そしてミシェルも最初の
処刑の時にも彼が家と名誉と残った家族を背負って、冷たい冑の下で泣きながら自分
を処刑し儀を行った事を知るのでした。「もう十分です」とミシェルは言い、次の世でも
兄弟になりたいとディディエに伝えると彼も喜んで消えていきました。
そして、光の中にでたミシェルとモルガーナ。モルガーナはミシェルに最後に礼を言い
「さよなら」を告げて消えていきました。ミシェルは、待っています・・・ずっとジゼルを。
長い時間、どんどん館の面影も消えて自分も消えていく中でジゼルを待ちます。
そして最後の欠片ほどになった頃、長い髪のジゼルが現れました。「待たせてしまって
ごめんなさい」と。二人は消えていきます。舞台は現代へと移り、ジゼルはそれぞれ
見知った人たちとすれ違い、時には会話をします。そして、最後に一番会いたかった
待っていた人と再会して微笑みあって、終りました。

全てのエンディングリストが埋まると、プロローグを選ぶと物語の始まりの少し前、
館の女中とモルガーナを見ることが出来ます。「あなた」が訪れる、ほんの少し前・・・
終りの始まりです。

●外伝 Another Episode:登場人物と物語 ※本編クリア後に解禁します。

貧民街の青年・ヤコポ
第三の扉で登場したヤコポの前身です。というか、全ての始まりの青年とも言えます。
子供の頃に売られたが逃げ出し、この町の貧民街にきた。生きるために盗みから
場合によって殺人まで犯してきたが、根本的に真っ直ぐで気の良い青年。
(はっきりとは書かれていないが、イタリア系の男子だと思われる)
現在は娼館の雑事などを手伝いながら貧民街の若衆をまとめる役も担っている。
粗野な連中が殆どである貧困層にあって、自分を「僕」と言い言葉遣いもどこか
気品を感じさせる。それは血筋や家柄のせいではなく、彼に成り上がろうとする野心が
あり、その時に自分が恥をかかないよう心がけているため。
現状に満足しておらず、周囲の環境すらも変えようとするのは真っ直ぐな正義感と
言うよりは「持たざる者の正義感」だと自覚している。娼婦たちと親しくしながらも、
仲間意識、あるいは家族意識が強く手を出さない。そういう律儀さは固い。
領主の悪政に憤っており、奴隷の反乱を企てた。その際にモルガーナと出会い、
どうしても彼女を見捨てる事が出来ずに面倒を見る事に。3年を経て、10歳も年下の
モルガーナに特別な感情(恋慕)を持っていることを自覚し、彼女が大人になったら
伴侶としたいと思うようになる。モルガーナの誕生日に好意を伝えようとするが、その日
強盗によって娼館が襲われ、大怪我を負って倒れている間にモルガーナは行方不明に。
死んだものと諦めているが、どこかでまだ生きていて欲しいと願っている様子。
その後、その事件がきっかけとなり自分に権力があれば大切なものを守れる、失わずに
済むと強く思うようになり、もともとの野心もあって本格的に領主を倒す革命を起こす。
そして自らが王族と偽り、領主の名と地位をそっくり受け継いだ。しかし自分が思ったより
ずっと領主の座は重く、政治は難しかった。かつての仲間の不満を受け止め切れず、
裏切りも重なって殺されかけてことにより疑心暗鬼となり、かつて自らが殺した領主の
ように心を病んで閉ざす。それでも町の発展には少なからず貢献はしたが、貧民街に
までなかなか手が回らず、もっと権力と金を集めるため一計を案じ「魔女=聖女」の血を
使って金儲けと信仰を集めようとする。まさか、その犠牲にする者が、おそらく今でも
唯一彼が愛するモルガーナ本人であると知らず・・・。

この後で、東洋の男が片腕を切り落とした状態のモルガーナを連れて来て、モルガーナ
が半狂乱になったままヤコポを前の領主だと完全に勘違いして「絶対に許さない」と叫び
ヤコポ=領主バニエルは計画を続行することを決めてしまう。その結果、最悪モルガーナ
が死亡して自らは唯一愛した女性から永劫に呪われた存在になるとも知らずに。
どこから間違ったのかな?と私ですら思う(-_-;)物凄く、大切にしていた。モルガーナだけ
じゃなくマリーアのことだって、町の他の連中の事だって。もともと広い世界とか高見に
昇りたいという野心は持っていたとしても、それは亡者と言うほど酷いもんじゃなかったし、
最初は「守るため」にそれを求めたのに。気が付けば、全く別のものに固執していた・・・
これって本当にヤコポだけが悪いのか?モルガーナが錯乱しておらず、ヤコポだと
気付いたら、いや東洋の男が腕を切り落とさなかったら、いやメルが中途半端にモルガーナ
にちょっかいを掛けなければ、いや、いや、いや・・・強盗が、いやジェレンが、いや領主が、
いや母親が・・・ジェレンが裏切らず、あの3年目の誕生日が無事に過ぎて、翌年の祭りに
二人がまた参加して楽しく過ごしてモルガーナが16歳になったら、そんな未来はどうしても
無かったのかなぁ(ToT) ヤコポは、きっと「広い世界」が彼の間違えた先じゃなくて、彼や
彼女の故郷を目指す旅とかだってことに、きっと気付いてくれたはず。
でも、やっとヤコポがモルガーナと再会出来た時の状態は例えるなら猛スピードで走って
いる列車の中で、列車を止める術もなく、降りるなら飛び降りでバラバラになる覚悟とか
必要で、なのにモルガーナには前の領主に間違われ「絶対許さない」と罵られ。
本当にせめてヤコポだと気付いていたら、きっとヤコポは死んでも飛び降りたかも知れない
し、列車を止める努力くらいはきっとしたと思う(思いたい)。片腕が既になかった状態も、
拍車をかけてるよね。。。(-_-;)モルガーナがヤコポを許したとしても、もう愛せないだろうと
そう思うのがとても辛いのは、私がヤコポに一番同情しているからかも知れません。
どうしても自業自得とは、とても思えなくて。フェキナストスコープの「幻」を思い出すと
本当に切ない。最初にも書きましたが、彼がある意味では「始まり」である事に違いはない
と思います。モルガーナが聖女でも魔女でもなく、普通の少女であることの。
結果的にはヤコポの野心が全てを壊した・・・となってしまうのでしょうけど、私にはやはり
どうしても「そこだけ」を責める気にはなれないし、モルガーナが最初から普通の女の子
だったらヤコポが彼女に惹かれなかったのか?という疑問にも当たるのですが愚問と
言うか、それこそきっと意味無いのでしょうねー。

傷のある少女・モルガーナ
残忍で非道な行いで民を苦しめている領主に買われてきた少女。その前は生まれた
遠くの村で(たぶんイタリアだと思う)母親が「純潔のまま受胎した」と言い、干ばつに
苦しんでいた村に生まれた瞬間雨を降らせた(今となっては偶然だと思われる)。
それにより聖女として崇められ、5歳にして自らもそう自覚していた。大変に敬虔で、
父である神と聖女である自分を信じている。しかし、実際には母親が流浪の民と関係を
もって生まれた子供であり、その母親によって人買いに売られ領主の元で見世物紛いに
血を抜かれ宴の席でさらし者になってしまう。精神的にも肉体的にも虐待されたが、
純潔だけは守られていたため、自らが聖女であることだけを頼りに生き延びた。
しかし、その責め苦は彼女の顔に醜悪な痣を浮かび上がらせ、危うく領主に魔女として
斬り殺されそうになった時、奴隷の反乱によってヤコポに救出される。最初は娼婦やヤコポ
を軽蔑し、嫌っていたが次第に自分が「普通の女の子」でも良いような人間らしい感情を
覚えていく。3年目の運命の日、再び彼女は盗賊たちの手によって幸福を奪われた。
しかし、それでもまだ最悪の運命の日には至っておらず、この先、彼女は自らを魔女と
認め3人の男たちを永劫に呪うこととなる。その真実を知らぬままに・・・。

言い方おかしいかも知れないけど、素質があり過ぎたのでしょうね。聖女としても魔女と
しても。生まれ持ったカリスマ性ってやつは、自分の努力でどうにかなるもんではない
らしいけど、持っていれば磨きはかかるらしいので。彼女の場合は、その磨きもあって
完全に自分を特別な存在だと思っていたから「普通」がおかしなことだった訳で。
単純にツンデレと言ってしまうと、それも何だかなーって気がしますが、ヤコポに対する
彼女の態度は完全にツンデレです。残虐な領主と出会わなければ聖女のままだった
かも知れませんね。これも言っても詮無いことですが、結局はあのモルガーナだから
あのヤコポと出会って芽生えた感情ってことになるのでしょう。何かが欠けても、こんな
強い結びつき(よくもわるくも)には成らなかったのかもって気がします。
彼女の中にある「白い髪の娘」が、いつかもっと目を覚ましてくれたらいいなと思います。
やっぱりヤコポ贔屓の私(笑)は、二度とモルガーナが彼の側を離れて欲しくないし、
彼を孤独に死なせないで欲しいし、ヤコポがモルガーナを幸せにして少しだけ彼より
長生きして、彼の今際の際に「私、あなたが好きよ。幸せだったわ」と言って欲しいので。
出会えて良かったと、お互いに伝え合って欲しいので!!(ToT) でないと、なんだか
私までずっと引き摺ってしまいそうなのでっ!!頼むよ、本当にもう。

マリーア
元は孤児院で育った勝気な女性で、自らの恋心においては異性を意識出来ないという
自覚がある。ある意味では博愛主義と言ってもいいかも知れない。家族愛や仲間意識は
とても強く、度量の広いところがある。性別においての自己の恋愛に興味がない。
それゆえに幼い頃から知っているヤコポには、全身全霊の信頼をおいていても男女の
関係にはまったくならず、何でも言える親友の間柄。それだけに、その信頼や友情を
裏切られた時の反動が大きい。モルガーナの事も、ヤコポの頼まれたがゆえに本心から
親切に家族として迎えることをしたが、ヤコポが領主となってからは彼を殺そうとまでした。
現に未来において使用人となった際には、ヤコポの妻となった白い髪の娘との間を裂き
甚振れるだけ甚振って殺そうとしたがヤコポの反撃にあって死亡した。
ミシェルがモルガーナを救おうと奔走した際には彼に協力し、ヤコポとの関係についての
情報なども教えた。12歳の頃には娼婦として活動していたが、「孤児院の生活よりよほど
マシ」というほど自由を好む。道徳観念は皆無なところもあるが、基本的に明るく頼もしい。

彼女こそが、一番の被害者だと思う。本当に純粋に(-_-;) ジゼルもたいがい可哀相だけど
まぁ彼女は逆恨みにしてもミシェルを取られた腹いせ(笑)とも言えるけど、マリーアは過去
から親切だけであって完全に巻き込まれ事故!!第三の扉の話で地下室でマリーアが
見つけた自分の文字の意味が、このシナリオの最後に分かります。
結局はミシェルが過去を変えたつもりでいても、あれは死者の世界の話であって現実は
何も変わっていません。あの後、村人が血を吐き、黒い斑点のでる病気が流行して街が
全滅するのです。その時にマリーアも村人に捕まってモルガーナへの生贄のようにして
あの地下室に閉じ込められ、血を吐き病気になり、狂気の内に幸せだった頃の幻影を
見ながら死にました(ここのスチルは、一番見るに堪えなかったかも)。
マリーアは、領主となったヤコポを支える時がくるかも知れないと(自分では執政にすら
なれると思っていた様子w)字を独学で覚えていたのです。彼らの友情は少しも変わって
いなかったのに・・・伝わらないことの悲劇って、本当に連鎖するものかも知れません。

グラシアン
ヤコポが領主の館で最初に起こそうとした奴隷の反乱計画において、なかなか仲間を
増やせず右往左往していた時、いきなり決闘を申し込んできた男。
体格が良く、長剣を巧に操る武人肌。町に流れてくる前は喧嘩賭博で人を殺す事も厭わず、
先祖はコロッセオで活躍していたという振れ込みもある。頭を使う事は苦手なようだが、勘は
鋭く奴隷たちの心理もヤコポより理解していた。ただ猪突猛進な部分が強く、自らの力を
過信するところもあるので自分より上の存在を容易に認めないところがある。
ヤコポを信頼するようになったものの、革命後に領主となったヤコポの治世が全く貧民街には
利益とならず、逆に裏切りとしか映らない行為になってきたため彼すら殺して再び革命を
起こそうとした。結果的にそれは失敗に終るが、ヤコポに疑心暗鬼を抱かせ彼の人格を完全に
歪める原因ともなった。

うーん。まぁ・・・男なら野心あって何ぼ!!だと思うので(笑)。彼もまた、ヤコポとは別の
意味で素直に野心家だっただけだと思います。が、マリーアと違って領主となったヤコポを
羨んで成り代わってやるつもりだけで(民とか仲間のためとか関係なく)ヤコポを殺そうと
やってきた上に、ヤコポの理解者で一番の協力者であったオディロンを失わせる原因にも
なったようなものなので私は正直、彼があまり好きではありません。自業自得だと思う。
何らかの形で、もしかしたら彼も現代とかに居るのかも知れないけど私はもうどーでも(笑)。

ジェレン
マリーアたちの娼館に新人としてきた娼婦。年齢的には若い方。子供の頃に両親を目の前で
殺され売り飛ばされた壮絶な過去を持っているが、本人はケロッとして明るい。
人懐こい性格で、いつも笑顔を絶やさないため人気者である。が、実は彼女には「悲しみや
苦しみを感じられない」という生まれつきの精神的な欠落があった。認識力の弱さから推測
するに、知能発達に障害があるとともに感情面でも欠落が最初からあったと思われる。
両親の殺害等によって生じた、とかではない。生まれつきのもの。ただし、それを指摘されて
「自分の反応はおかしい、いけない」という判断は出来たため、教えられれば演技が可能。
本当に心からそれを感じることは不可能。だが、決して心が冷たい訳ではないし感情が
無いわけではない。唯一、自分に「そのままでよい」と言った領主バニエルに好意のような
ものを感じており、彼の命令で貧民街をスパイしていた。しかし、本気でマリーアたちの
ことも好きであり、そこに悪意は全く存在しない。

割と早い段階で、どっちかだろうなとは思っていました。「悪意のある裏切り者」か「悪意の
ない裏切り者」。どっちにしろ、彼女が何かしら原因で崩壊が始まるのは予想出来ました。
それにしても、このライターさんは人の心の薄暗い機微をようしってなさる(笑)。
ジェレンは酷い女の子じゃない、感じれないのは彼女のせいではないと思う。
仕方が無いことなんだろう。それに、彼女がバニエルに惹かれた理由も何となくだけど
やっぱり理解は出来る。恋愛なんて生易しいものじゃないけどバニエルにしても同じく
レジェンに通じるものを感じていたのだから。最後まで自分中心なところも両人ともに
そっくりだったし。これを何て形容したらいいのか分からないけど、それでも絆なんでしょうね。
しかも、胸糞悪いことに私はレジェンに興味を持った領主を何故か嫌いになれません。
同情とか憐憫とかじゃないんだけど、ユキマサとポーリーンともまた違うんだけど、
それでもやっぱり人って人を何らかの形で求めてしまう生き物なんだなぁと思って。
面倒臭いような(笑)怖いような、不思議なような当たり前のような変な気持ちで見て
おりました(^^ゞ

バニエル
ヤコポたちが住む町を治めている領主。もともと怜悧な側面が強かったが残虐性はなかった。
実の父親と弟に跡継ぎ問題で殺されそうになり、反撃して殺した経緯を持つ。
そうまでして手に入れた領主の座だったが、政治は彼を疑心暗鬼にし精神を蝕んだ。
いつしか残虐性が目覚め、他人の絶望を好んでみたがるようになった。
ヤコポが自分に成り代わる革命を起こし対峙した際に、自分を「まだ殺すな」と忠告したが、
ヤコポは聞かなかった。結果的に、バニエルの最後の呪詛は現実となった。

はっきり、きっぱり決して良い人間ではない!例え、肉親に殺されかけて統治に疲れ果て
たからだったとしても!!でも。うん・・・ヤコポも同じ轍を踏んでいるので(-_-;)
上に立つ者の孤独とか悲哀とか恐怖とか?そういうのって、分からないけど想像は出来るし。
ヤコポは彼を殺さず、監禁して(笑)話を聞くべきだったかも知れない。軟禁程度でいいから。
まぁ、そんな都合の良い展開あるはずもないんだけど。あと、レジェンとの関係も。
決して恋愛だとは思わないけど、それでも彼が最後にレジェンを逃がそうとしたこと(一緒に
逃げなかったこと)最期にレジェンを利用したことも含めて(最期はレジェンに殺されたのか)
ブレてないところだけは、うん・・・何だろう分かったらマズイ(笑)けど分かる気がした。
ヤコポ贔屓なので、取り扱いが厄介で本気で腹の立つ存在には違いありませんね。

オディロン
・・・(ToT) 生きて、出来ればヤコポを立派な領主にして欲しかった。それとも、彼が居ても
やっぱりヤコポは壊れちゃったかしら。もしかしたら、そうならない未来もあったのかも。
そしたら、無事にモルガーナと再会して、いつか領主婦人とかになって、めでたしめでたし。
・・・にならんよな(-_-;)あほらしい想像してしまったけど、オディロンさんには泣かされました。
ヤコポの味方で、一番の実戦力だったのに。本物の領主の誇りだったり、出来れば喜び
だったりも教えて欲しかった。上に立つものが孤独なのは想像出来るし、よくそういう話も
見聞きするけど、だからって幸せになったらダメって法はないでしょう。絶対に孤独で居ない
とダメって決まっている訳じゃない。そうなる、って分かっているだけで。でも、だからこそ、
そうならないための人が先に居なくなったらダメです。ヤコポを、守って欲しかったです(ToT)

●現代編 vita版追加要素:登場人物と物語 ※ボイスあり
【ジゼル/cv:瀬戸麻沙美】

【ミシェル/cv:櫻井孝宏】

【少女/cv:小清水亜美】

【メル/cv:保志総一郎】

【ネリー/cv:阿澄佳奈】

【ユキマサ/cv:鈴村健一】

【ポーリーン/cv:豊崎愛生】

【ヤコポ/cv:諏訪部順一】

【マリーア/cv:堀江由衣】

感想
魂が解放されたシナリオエンドの後、現代に転生したそれぞれの人生が描かれて
います。ミシェルとの最後の約束をそれぞれが魂に刻み、今度こそ悲劇を繰り返す
ことのないより良い人生を歩むために。でも、そこには魔女から解放されてもなお、
少女として苦しむモルガーナの姿と、解き放たれてもなお自分を許す事のなかった
ヤコポの姿もありました。二人が、今ふたたび再会する時・・・やはり悲劇が起ります。
前世の記憶なんて、ない方が幸せになれる。
ミシェルやジゼルのような例は特殊なのでしょうね。それともヤコポとモルガーナが
特殊過ぎたのでしょうか。ヤコポもモルガーナも、想いあっていた・・・いるのに。
解放された後も、結局は自分の魂を責め続けて完全に消耗し消滅しそうだった
ヤコポを、モルガーナは結局見捨てられませんでした。
彼女は、「二度と巡り会わない」と告げたヤコポを救うために魂の導き手となり、
彼と一緒に現代に転生したのです。顔の爛れは消えましたが、体の爛れは消えず
残ったまま。でも、それを消せるのはやっぱりヤコポなんだと思います。思いたい!
正直、私はミシェルは好きだしジゼルと幸せになって本当に良かったと思う。けど!
これ以上、ヤコポの邪魔しないでぇぇぇ!!(ToT) ・・・と叫びたいのよ(笑)
ミシェルは悪くないけど、横取りされたヤコポの身になると、自業自得だったとしても
納得出来ない。何だかスッキリもしない。彼は凄く頑張ってたのに、見返りだとか
本当に要求してた訳じゃない。ただ、最初の行為が好意になっただけじゃないかぁ。
それも相手がちょっとアレでソレで、しかも幼いから待つ気だったんだよ!?変態と
かじゃないんだよ!?なのに、あんまりだ・・・(ToT) だから、本編にはなかった最後の
故郷への3人旅の話は、有り難かったです・・・が、足りないっ(笑)
足りないので、たぶん・・・これで終って良かったのでしょう。忘れないで済む(^^ゞ

・・・なぁ〜〜〜〜〜〜んて!言うと思うか!?いや、無理だから!こんなモヤっとした
まま終りとか、無理だから!!どうしてくれるんだよ、どうしてくれるんだよぉぉぉぉ(ToT)
ヤコポとモルガーナの幸せなイチャラブを今すぐ出せ、おらぁぁぁぁ!!頼む、ああああ。
ヤだもぉ、プレイしなきゃよか・・・(黙)(-_-;)

 プレイして良かったです。本当ですm(_ _)m

総合感想
長い・・・・・・・・・まっじ、長い!!(ー'`ー;)そして、
面白い!!
でも、長い。本当に長かった〜。途中で止めようとは思わなかったからこそ、
長過ぎて本当に疲れ果てた感じ?(笑)徹夜しそう、じゃなくてマジに徹夜した!
翌日が辛いから、社会人になってからやらなくなった徹夜を久しぶりにしたぞぉ!
レイジングループの時ですら、寝たっつーのに(笑)。でも、結局は朝までプレイを
しても終らなくて、途中で止めて夜に再開。うう、さすがに目が辛い〜。

この作品、最初に「あなた」が主人公のように登場する訳ですけど、記憶をなくして
それを探るために色々な情報を見聞きする・・・と、これだけならよくある記憶喪失もの
の設定なのですが、だんだんその「あなた」が本当に誰なのかが分からなくなって、
しかも「あなた」が本当に自分なんじゃないかと錯覚しそうになるというか、もう自分で
いいかもと思わせる部分もあって、「あなた」とか「私(Me)」というのを、こんなに上手く、
ああ本当に語彙不足ですが巧妙に使っている作品を私は他に知りません。
そして、「他人の悲劇だから耐えられる」とは本当に、よく言ったものです。
最初こそ本当に「他人の悲劇」だと思って「可哀相」と単純に思っていたのですが・・・
だんだん自分が本当に「あなた」であり、どんどん「あなた」でなくてはいけない!って
気がしてきます。そうじゃないと、あまりにも酷いじゃないかと・・・(-_-;)
もう自分が「あなた」で「ミシェル」でいいじゃないか?と思わず・・・そう思ってしまうような
気持ちにさせられる、実に恐ろしいノベルゲームです!!「(^^; )
なのに、またいつの間にか傍観者に戻っていたりもするんです。世界観は鬱々とした
暗い館の中が多いし、時折外の風景が出てきても陰惨な事件ばっかり起るし・・・
それなのに変な言い方ですけど登場人物は生き生きとして、単純に形容するのも
難しいくらい魅力的です。男も、女も。その事情すら全てが。目が離せなくなる、という
一点におてい作品の勝利(笑)。だって、選択肢がある、とは言っても極少で、ほぼ完全
なる「読み物」だと言ってもいい(笑)。なのでゲーム性(捜査とか物集めとか推理系)は
無い!作品です。そうなると、純粋に文章や展開が面白くなければ理屈抜きで読み進める
事が出来ない作品なんですよね。途中で飽きる人が居ても私は驚かないw
こればっかりは向き不向きもあるし、好き嫌いもキッパリ、ハッキリ出る作風だと思うし。
まぁ少しオカルト的なサスペンス(ゴシックホラー)なんかの絵やBGM付き小説などを
求めているなら面白いだろうなと思いました。登場人物は、毎回ほぼ違うのですが、
まぁある意味では「同じ」です。絡みに絡んだ複数の人物の永きに渡る歴史。
知らない方が幸せな事って、確かにあるかも。前世の記憶とか、もっとずっと過去の
記憶とか、昔は少し憧れたこともありましたが・・・無くて、本当に良かったと思います。
正直、扱っているテーマ?にダイレクトにヒットしなくても、この作品はそこらじゅうに
地雷となる部分がてんこもりって気がしました。人間が普通に生まれてから体や心に
負うであろう大なり小なり傷とか酷い時にはトラウマ?みたいなものに、何かしら触れて
ビリッと来る感じと言うんでしょうか。感動して胸が痛むとか震えるとかとは、ちょっと
毛色が違うんですけど。なので、絶対にダメ、受け付けないって人がいてもおかしくは
ないなと思いました。たぶん地雷って自覚があろうとなかろうと、踏んだら知らなくても
勝手に爆発して気付いた時には吹っ飛んでいるもんですから(笑)。
まぁ、吹っ飛ばされる危険性のある作品ですが、それでも十分に傷を抉られても読んで
良かったと思う作品でした。私は決してMじゃない。いや、これはミシェルのMじゃない
って意味じゃなくて・・・でもミシェルって少しだけMですよね(笑)「(^^; )
弄ばれキャラのMという方がしっくりきますかね(←ヒドイw)
もっとダラダラと感想を書き弄りたいですが、さすがに訳が分からなくなってきましたw
たぶん、自分で自覚しているよりもっとずっと深入りしていると思うのですが、暫くは
淡々としていたいと思います。怖いので(^^ゞ 最後に、モルガーナの幸せと、ヤコポの
実り多き人生と、今度こそ妻ともなった彼女に看取られる幸福な死を願いつつ・・・。
あの館こそが、今度こそ消滅していますように。もしも、再び彼らの魂と再会出来ても
二度とあの館の中ではありませんように。そして、あの館のような存在が私にもあなた
にも必要となりませんように。・・・本当に、とんでもない作品に出会ってしまったなぁ(笑)